商号登記

1)商号とは

「商号」

 商人が営業上自己を表示するために用いる名称。商法上、会社は必ずその商号を定め、また株式・有限など会社の種類を明示することが要求される。

「商号権」

 商号について認められる権利。他人に妨げられないで商号を自由に使用することのできる商号使用権と、他人が不正に同一または類似の商号を使用するのを排除できる商号専用権がある。

大辞林より


 私は1996年の開業以来、一貫して「システムブレイン」の屋号(後述)を使用してきました。

 屋号を使用したのは、開業の本当に最初の頃、取引先やエンドユーザー(特に大企業)に電話で問い合わせたり、担当者を呼び出してもらう際、個人名を使うと露骨に「どのようなご用件でしょうか? 就業中は個人的なご連絡は致しかねます」などと言われたのがきっかけです。

 以前、会社員時代「○○の簗瀬と申します。生産技術課の××様をお願いします」と電話するとすんなりつないでくれたのですが、「簗瀬と申します」だと前述のような対応を取られました。

 そこで、会社のような名称を考えました。「システムブレイン」安直もいいところで「機械システムの頭脳」のような感じで付けました。(いま考えると稚拙な名称ですが)

 一応、イエローページで県内に同じ名前の会社等は無かったので、勝手に付けて税務署に「個人事業の開廃業届出書」を提出する時に「屋号」欄に「システムブレイン」と記載しました。

 別にクレームも無く届け出は受理されましたので、それで安心して使っていたのですが、「屋号」には何の保護も占有権もなく、その名称を私以外が悪用しようと窃盗しようと文句を言えないことを後日知りました。

 それでも、一応県内にも同名企業等は無く「システムブレイン」の「屋号」を使い続けていましたが、2000年前半の「インターネット・タウンページ(全国版)」を見てみると、同じような企業名が有ることを知りました。一番近いところで福島県のパソコンショップ「システムブレイン」がありました。


 そこで、「法庫」で法律を調べてみると「屋号」は単なる名前であり、世の中に「同姓同名」を禁止する法律がないのと一緒で、同じ「屋号」では同一名称があっても特に問題が無いことを知りました。

 さらに「法庫」で調べてみると、同一名称を防止するためには「商号」と「商標」が有ることを知りました。

 「商号」は法人(会社)などの正式名称であり、同一市町村区では同じ商号は使用(登記)出来ない。一旦登記すれば(法理論上は)永遠に使用できるが同一市町村区以外で同じ「商号」があっても構わない(保護範囲は市町村区内のみ)。管轄は「法務局」

 「商標」は全国(日本国の主権の及ぶ全地域)で有効だが、「特許」扱いであり毎年更新料を支払って維持する必要がある。管轄は「特許庁」

 私としては「他の」「システムブレイン」に文句を言われなければ、別に実害はないので「商号登記」に挑戦しました。普通法人(合資会社、合名会社、有限会社、株式会社)を設立する場合は、法人設立の時に自動的に「商号登記」されるのですが、個人事業の場合は法律上「事業者は個人なので、個人名を使って仕事をすることには何の問題も無い」のですが、前述の企業等の連絡等で実際には何らかの名称を使用することで仕事が円滑に進みます。そこで、再度法律を調べて見ますと、法務局に行って「商号登記」をするのは何の問題も無いことに気づきました。

 つまり法律(商法・商号登記法)の言いたいことは、「法人を設立する際は、自動的に商号登記もなされる」「個人では、特に商号登記をする必要(義務)はないが、商人が希望し法務局まで出向いて商号登記するなら、それは認める。」というスタンスです。

注意:商法では個人事業やSOHOという言葉はありません。どこまでも商人です。なんせ未だに管理職の事を「番頭、手代」と書いてあるのですから(笑)


(私は法律の専門家では無いので、この項に間違いがあっても責任は負いません)


 普通は司法書士や行政書士に頼むらしいのですが、私は「本人登記」でやることにしました。

 (大抵の手続きは「本人」ができます。ただし法律や規則の類がたくさんあるので、法律手続や行政手続は代理人(司法書士や行政書士)に依頼するのが一般的だそうです)


2)手続きの仕方

 1.自分の事務所(SOHOの方は自宅)を管轄している「法務局」を調べる。(山形県米沢市の場合は「山形地方法務局米沢支局」あまり人口の多くない都市ですと、「出張所」になる場合もあります)

 2.出向いていって、「商号登記」したい旨を受付に口頭で伝える。(個人の方は個人事業の商号登記と明確にしたほうがいいです。私が行った受付の方は個人でも商業登記できる事を知らなかったようで、登記官が飛んできました(^^;;)

 この一件以降、私の場合ですが「登記官」に直接教えてもらいましたが、(大きい)「法務局」の場合は事務職の方々と話す場合が多いと思います。

 3.類似商号がないかどうか、確認します。

 係員の方が用紙をくれますので、必要事項を記入し提出して下さい。中の方に呼ばれ大量の登記済みのバインダーが用意されますので、類似商号がないかどうか確認して下さい。

 なお類似商号がすでに存在する場合は「先願主義」ですので、どうにもなりません。

 たとえ明治の登記でも、「商号登記の抹消」がされない限り有効ですので、「こんな設立の古い会社、見たことも聞いたことも無い」などと係官に詰め寄ったりしないで下さい(当然)

 また登記簿原本ですので、持ち出したり、コピーしたりはできません。正式にコピーを取ると「登記簿謄本」として500円かかりますので、メモ用紙を持ち込んだほうがいいと思います。

 4.類似商号がないと確信したら、「商号登記簿用紙」と「印鑑届出書」の用紙を予備も入れて2枚くらい貰ってきます。

 なお、ここまでは全て「無料」です。

 5.法律では「印鑑の登録」は「登記所(法務局)」ですることになっているのですが、実際には市役所に行って印鑑証明をもらってきて、「印鑑届出書」に貼り付けて「商号/名称」欄に自分の登記したい商号を記載、本店/主たる事務所に事務所の住所(SOHOの方は「自宅住所」)、資格欄は私は空欄でした、氏名・生年月日を書き、会社法人番号は個人なので当然空欄です。

 6.さて本題の商号登記用紙です。

 登記する際一番悩むのが、「営業の種類」です。漠然とした内容では通りません。具体的な商品名を書けと言われるですが、私のような仕事の場合、いろいろな機械を作りますが「各種機械」は不可です。


 悪い例)わたしの1回目の登記申請内容

 1.産業用機械設備、省力・専用自動機、プラント・化学設備、計測機器、その他の産業用設備の一切の業務

 2.コンピューター機器、システム企画・製作、ソフトウェア製作・販売、機器設置・コンサルティング・保守その他一切の業務

 3.電気設備設計・製作・施工・保守(ただし電気工事士免許が必要な業務を除く)

 4.その他 機械・電気・電子・コンピューター関連の一切の業務


 係「漠然としすぎています。印刷機とか溶接機とかハッキリ書いてください」

 私「では、今まで経験のある機械名などを全てあげればいいのでしょうか?」

 係「そうして下さい。」

  カウンター後ろのテーブルで思い出せる限りの機械名称をメモ用紙に書きました。

  「前の会社でやった」「配線だけはしたことがある」「機械を見たことがある」レベルまで、全て書きました。

  A4版のメモ用紙に4枚くらい書いて係員に持っていったら、唖然とされ

 係「多すぎます。この本に登記できる営業の種類が載っていますので選んでください」

 私(そんな便利な本があるなら最初から出せ!)と心の中でつぶやく...

 係「一応参照としたページがあったらページ数を控えておいてください。ただし持ち出し禁止の本ですので、この場でメモしながら使って下さい」

 私「ハイ」


 良い例)なのか、どうかわかりませんが、通った内容です。

 1.機械装置その他各種プラントの設計・製作・施工・販売・修理および保全管理

 2.各種機械装置の自立盤・制御盤の製造、販売

 3.コンピューターシステム・システム機器の開発・設計・製造および販売

 4.前各号に付帯する一切の業務


 個人的には、どう違うのかよくわかりませんが、要は「本に載っている」=「前例がある」=「OK」なのでしょう...

 お役所仕事の典型例のような気がする(^^)

 実際にどんな仕事をしているかどうかの調査等はありませんので、将来やりそうな事を全部書くのもいいかも知れません。(私は機械設計はできませんが、将来的に機械一式で受注したい下心があるので、1.があります。もちろん受注できたら機械部分は丸投げして、電気部分だけ自分でします(^^;;) 民間企業同士では別に違法ではありません。(公共事業は別ですけど、どうせ私には縁がありません...)

 なお、かならず「販売」の文字を入れましょう。「設計業」「ホームページ製作」だと「販売」しないので「商人」では無いので「商号」は不要とされ通りません。(情報提供 hex-pressさん)

 その場合は「設計業」の場合は「設計・製作・販売」とすれば、通ると思います。


 最後に「商号登記申請書」を付け、¥30,000円の登記印紙を貼り、正式に提出します。


 私の場合は約3日ほどで、手続きが完了しメデタク(屋号)→(商号)になりました。

 なお、「商号」は正式な名称(会社名と法的に同等)となりますので、契約書や銀行の名義人などに使えます。


 参考)法務局は税務署とは連動していません。SOHOの方は商号登記しても、税務署で事業者扱いされませんのでご安心下さい(多分...心配なときは法務局で確認して下さい...ちょっと自信なし(^^;;)


3)裏技編

 1.シロートだとバレないように受付(相談)する机の上に資料を並べる。法律のプリントアウトは効果的。一番目に付くところに「商業登記法」の全文プリントアウトを置いておく。

 2.冷静に話を聞く、わからないからと言って「担当者を出せ!」などと、やってはならない。

 3.通らなくても怒らない、考えてみれば「同一名称」さえ回避できれば構わないのだから、通る内容だけを書く。

 4.最終項には必ず「前各号に付帯する一切の業務」を入れる。これほど漠然とした内容は無いと思いますが、なぜかこの一文は通ります。

 5.裏技ではありませんが、登記印紙は最後に貼る。通らなくてお持ち帰りする場合に日付が変わる場合が有るため。

 6.同上ですが、修正する場合は修正液等は一切禁止です。(法律関係は全てそうです)2重線で消して(訂正前の内容を読めるようにして)訂正し、何字訂正と記入し訂正印を押します。(私はカッコ悪いので、全部書き直しました)

 7.領収書と違い、登記印紙に消印をしないで下さい。法務局側で消印を入れます。


4)参考資料編

 1.「必要書類」

 A)商号登記簿用紙

 B)印鑑(改印)届出書

 C)商号登記申請書(様式)

「商号登記簿用紙」と「印鑑(改印)届出書」は参考です。必ず法務局より正式な用紙をもらってきてください。(紙の種類が違います)

 2.「私の商号登記簿謄本」(悪用防止のため、印鑑は半分消してあります)


2002/10/27


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